前夜

 雲ひとつない夜空に、あまたの星が輝いている。
 周囲の野営の幕舎からはあらかた灯が消え、聞こえる音といえば時折不寝番が交わす声ばかり。
 ここグルニアの大地は今でこそ静謐に包まれていたが、陽が昇ればじきに朱に染まるだろう。アカネイア解放軍によるグルニア城への一斉攻撃が予定されているのだ。
 アリティアの王子マルスの指揮の元、連戦連勝を続けていたアカネイア解放軍だが、次の攻撃目標は何といっても古来より騎士の国として知られるグルニアの王都だ。名将カミユの下、精強で知られる黒騎士団が守りを固めている。勇将の下に弱卒なしという。今回ばかりはアカネイア解放軍といえども、厳しい戦いとなることが予想されていた。

 青い髪を肩の上で切りそろえた少女は、遅めの夕食を取ると与えられた幕舎で横になったが、すぐに起き出すと念入りに手持ちの武器の手入れを始めた。愛用の槍、いつもの佩剣、予備の短剣、予備の槍……。じきに手入れする武器がなくなると、彼女はふらりと幕舎から出て行った。
 見回りを続ける不寝番に労いの言葉をかけて、月が見える方へ彼女は歩いていった。立ち並ぶ幕舎が途切れると、草むらに彼女は腰を降ろし、しばらくの間、じっと月を眺めていた。

「カチュアじゃないか」
 カチュアと呼ばれた少女が振り返ると、彼女とほぼ同年代と思われる、やはり青い髪の少年が立っていた。
「マルス様……どうしてこちらへ」
「カチュアこそ、どうしてこんな時間まで起きてるんだい?」
 そう言うと、少年は少女の隣へ腰を降ろす。
「明日は大事な戦いだっていうのにさ?」
 微笑みかけられた少女は、少し慌てて俯くと、答えた。
「ええ……明日の戦いのことを考えると、眠れませんで……」
「じゃあ、僕と同じだ」
 少年は月を見上げる。
「勝てるか、不安で、ね」
 そう言われた少女は何か言わなければならないと思い、口を開きかけたが、少年の方が早かった。
「相手は負け知らず、常勝のカミユ将軍だ。麾下は精強を知られた黒騎士団。僕が勝てるんだろうか……」
 少女は少年が言い終わる前に、遮るように大声をあげる。
「いいえ! マルス様だって常勝将軍じゃありませんか! なんでカミユ将軍に引けを取りましょう!」
 少年は少女の気迫に、少しの間目を丸くしていたが、すぐにふっと微笑んだ。少女はそれで自分が思わず大声を出していたことを悟り、頬を赤らめて俯いた。
「ごっ……ごめんなさい! 急に大声なんか出したりしまして……」
「いや、いいんだよ。ありがとう」
 少女が顔を上げると、少年は再び月を見上げていた。
「自分でも気付いてなかった。そうだね、幸運なことに、僕はまだ大敗を喫したことはない」
「幸運なんかじゃありません! ミネルバ様もマルス様の用兵を絶賛しておいでです」
「ミネルバ王女が? それは光栄だね。王女こそ常勝将軍だ」
 少女の主君であるミネルバ姫は、少年の軍門に降るまでは、やはり負け知らずの指揮官であり、また自ら先陣を切って出る勇猛な竜騎士でもあった。
「ほら、僕は小さい頃にアリティアを追われただろう?」
 少女は知っている。彼は彼が幼い頃、盟友に裏切られ滅亡した亡国アリティアの王子であると。
「そんな悲しそうな顔をしないで。僕は不幸せだったとは思っていない。タリスの人達は優しかったし、おかげでシーダに会う事だってできたんだ」
 少女はそれを聞いて、微笑もうと思ったが、実際のところ、彼女の笑みは少し引きつっていた。しかし少年は気付かない。
 タリスの王女シーダ姫は少年の想い人である。そしてシーダ姫の想い人はこの少年。
 しかし、少女の想い人もまたこの少年なのだ。
 少年は続ける。
「そんな状態だったから、用兵は初歩をジェイガンに習っただけだったんだ。正式に学んだことはない。そんな僕が解放軍全体の指揮を任された。正直、怖かった。恐ろしかったよ。僕がミスをすれば、大勢の人の命が失われてしまう。どうしてニーナ様は僕なんかにこんな大任をお任せになったのだろうと、疑問に思った」
 少女にとっては意外な話だった。彼女から見る少年の采配はいつも冴え渡っている。常に正しい、とは言えないが、正しい用兵よりというも、鋭さを持った用兵と思えた。天賦の才、ということなのだろうか。
「最初の内はハーディンが補佐してくれていたから良かったようなものの、後になってから『これからは王子に全てお任せする。私も王子の将軍と考えて使ってもらいたい』と言って、助言しかしてくれなくなったんだ。あれには本当に困ったよ」
 そう言って少年は頭を掻く。少女は微笑んだ。
「いつごろのお話ですか?」
「そうだね、ワーレンを訪れた頃からかな」
「でしたら、ハーディン様はマルス様を力量充分と見たんですよ」
 少女は少しだけ少年に顔を寄せて、言った。
「憶えていらっしゃいますか? ワーレンで私、初めて王子にお目に掛かったんですけど」
「うん、良く憶えているよ。忘れるわけがない。あの時カチュアはペガサスの上で大きく腕を広げて『武器は持っていませんよ』って全身で示していたね。手綱まで放して。僕らはカチュアが落ちはしないかハラハラしたよ」
 少女は頬を染めて、視線を落とした。
「あ、あの時はおつとめを果たすために必死で……」
 その様子に、少年は軽く笑いを漏らした。
「うん、僕はあの時、カチュアを真っ直ぐな人なんだな、と思ったよ」
「そうですか?」
 少年は大きくうなずく。
「しかし、今から考えるとカチュアが手綱を離したぐらいじゃ落ちるわけないよね。心配して損したな」
 そう言って、少年が手を頭の後ろで組んでおどけてみせたので、少女も笑みをこぼした。
「マルス様ってば」
「はは、冗談だよ。カチュアに会うまではペガサスナイトといえば知っているのはシーダくらいだったからね。シーダも随分上達したけど、やっぱり手綱を離すとなると、今でも見ていると怖い」
 そう言う少年の目は少女を見ていなかった。遠く、月を眺めている。少女は瞬間、悲しげな視線を少年へと投げかけたが、すぐに俯いて口を開いた。
「……話がだいぶそれてしまいました。元に戻したいのですけど、レフカンディでの伏兵への対処、ワーレンでの戦いぶりは、それはお見事でした」
「そうかな?」
 少年は軽く首を傾げた。少女は大きくうなずく。
「そうですよ。ペガサスナイトは戦場の一番高いところにいるんです。戦況は一番よくわかりますよ」
 少女は身ぶり手ぶりを加えて、説明を始める。
「レフカンディでは谷で伸び切った隊列を、伏兵に側面から衝かれて分断されていましたけど、すぐに、逆に伏兵を挟撃する態勢に入っていましたよね。非常時の備えができていることの証明です」

 レフカンディは港町ワーレンに続く長い谷である。マルス率いる解放軍はその先のアカネイア領に入るためこの地を通過する必要があった。敵対するドルーア軍もそれは承知で、谷を通過する際に隊列が伸びたところへ伏兵が攻撃を仕掛けて隊を分断、先行する部隊を伏兵と解放軍の攻撃目標の城が連携し包囲戦滅する作戦を立てていた。少女は当時解放軍に敵対するドルーア軍にと手を結ぶマケドニア軍に属していたため、この伏兵と呼応し前後に加え上空より包囲を仕掛ける予定だった。
 しかし、彼女の上官である王女はこの作戦をよしとせず、解放軍の進撃が始まる前に隊を離脱した。このため、天馬騎士の彼女は文字通りの高見の見物ができている。

 解放軍は隊列が伸びないよう、できるだけ密集して進撃してきた。その様子を見た王女は「解放軍には気の利いた指揮官が居るようだな」と評価している。少女も同意見だったが、勿論ドルーアとしてもこの程度は想定内。レフカンディにドルーアが築いた城の手前には、特に幅が狭く、また崖の手前に木が多く生えている箇所があるのだ。そこに伏兵が潜んでいて、解放軍が半分通り過ぎたところで攻撃を仕掛ける算段となっていた。その地帯ではいくら密集したとしても限界がある。

 ほどなくして攻撃が開始された。やはり密集しても人数が少ない。解放軍はすぐに分断された。狼煙が上がる。崖の上からでも城からの物音が聞こえ始めた。じきに城兵も解放軍の先行部隊を包囲するだろう。しかし、先行部隊は算を乱すことはなかった。すぐに反転し、逆に伏兵を挟撃する形を取っている。王女は「可愛げのない……少しは動揺してもいいものを」と、賞賛の声を漏らした。少女としても、こんな動きをする軍を見るのは初めてのこと。不利な形になっているのは味方なのにとは思ったが、それでも解放軍指揮官の鮮やかな采配に心を奪われた。

 客観的に見て、城から出た兵の動きは素早かったと評価していいだろう。だが、包囲を完成する前に伏兵部隊は潰走していた。作戦が完全に破れたことにより城側の兵の士気は大きく下がっているようで、もう大勢は決したと言っていい状況だ。王女も同意見らしく、行くぞ、と言うと竜首をめぐらした。

 帰途、緑髪の副官に王女はたずねた。
「私らが予定通り伏兵に呼応して上空から攻撃を仕掛けていたとしよう。勝てたと思うか?」
 少女の姉である副官は即答した。無理だったでしょう、と。
 ミネルバ王女は天を仰いだ。そうだろうな、と応えて。そして、今度は少女にたずねた。解放軍の指揮官は、誰か?
「アリティアの王子、マルス……と聞いています。ただ、年若です。オルレアンの王弟ハーディンが実際の指揮は執っているのではないかと思いますが」
「アリティアのマルス王子、か。彼にならば……」
 少女は言葉の続きを待ったが、いつまでもそれは出てこない。ふと後方を振り返ると、先ほどまでレフカンディ城に掲げられていた旗は見当たらず、代わりにアカネイアの旗が翻っていた。

 しかし、少年はこの戦果では満足が行かなかったのか、謙遜しているのか。
「伏兵を見破れなかったのは失態だけどね」
 その少年の言葉に、少女は大きくかぶりを振る。
「いいえ、対処がしっかりできていましたから、被害は最小限で済んでいましたよね? 誰だって百点満点の指揮はできませんよ。結果が良ければいいんです。あれで充分合格点です」
「そうなのかな……」
「そうですよ、そして」
 少女は胸の前で手を合わせた。
「ワーレンでは街に一切の被害を出さなかったことに感服しました」
「ワーレンは中立都市だからね。迷惑を掛けるわけにはいかないよ」
 当然のように少年は言うが、少女は、いや、誰であろうとその判断が並みのものではないことを知っている。

 レフカンディの谷を越えた先、王都アカネイアパレスの手前にある港町ワーレンは一大商業都市であり、周辺国に税を支払い、また城壁をめぐらせ独自の軍隊を持つことでアカネイアが滅亡した後も独立を保っていた。解放軍がこの町で物資の補給を行っている際、グルニアの騎兵団からの攻撃を受けたのだ。ちょうどこの時、少女は極秘裏に解放軍への使者としてワーレンを訪れており、内部の情報を容易に知りえる立場にあった。

 当初、ワーレン指導部はワーレン滞在中の解放軍を攻撃するのはワーレンに対しても敵対行為であるとして、解放軍へ協力する姿勢を見せていた。しかし解放軍の盟主は支援を断ったと聞いて、少女は驚いた。グルニア騎兵団は小勢ではない。むしろ大兵といってもいい規模で、解放軍の規模でワーレンからの支援を断るというのは、贔屓目に見ても無謀と思える行為だった。あの指揮を見せた解放軍の盟主がどうして? 勝てる見込みがないと思って自暴自棄になったのか? 少女はそうも思ったが、聞き込みを続けるとやはりそうではなかった。解放軍の盟主の少年は自らの判断をこう説明していたらしい。ワーレンが親解放軍と思われると、ここで解放軍が勝利しても、立ち去った後にどのような迫害を受けるかわからないからだ、と。
 指導部はせめてもとワーレン付きの傭兵部隊を格安で解放軍に提供しようとしたが、解放軍はそれも断り、正規の価格で雇用した。これは正当な商取引であり、それ以外の何物でもない。少なくとも、ドルーアがこの件について何らかの責めをワーレンに負わせるとしても、それは難癖にしかならない、そういった状況であると少女は判断した。
 かくして解放軍はワーレンの協力はおろか、城壁すらも利用することなく、討って出た。

「とは言え、地形的に街に篭もった方が楽に戦えたことは確かです。独立を守るためですから、ワーレンの城壁は堅固です。普通に考えて使わない手はありません。ワーレンも協力を申し出ていたのですよね? それを、街に被害や迷惑をかけまいと討って出る……なかなかできることではありませんよ」
「考えなしなだけだよ」
 謙遜する少年を、たしなめるように少女は否定する。
「いいえ。そんなことはありません。その証拠に、それでいて、やはり被害は最小限。凄いことです。もっとも、あのドラゴンのおじいちゃんが頑張ってくれたせいもあるんでしょうけど」
 少年はうんうん、と大きくうなずく。
「バヌトゥはあの時は本当に良く頑張ってくれた。彼とドーガがいなかったら、どうなっていたか」

 少女は戦いが始まる前にワーレンを抜け出し、市街の南にある小高い丘へ向かった。グルニア騎兵が視界に入るようになったのは、その一時間ほど後のことだ。

 解放軍はまず鎧騎士の部隊を全面に押し立て、槍で牽制しグルニア騎兵団の突撃をしのぐと、その間に後方に回り込んでいたマムクートに攻撃を仕掛けさせた。騎兵は退路を断たれ狼狽し、騎馬は恐ろしい生物に怯え、竿立ちとなるものも多数。ところへ、弓騎士の部隊から雨あられと矢が降り注ぎ、小さく固まった騎兵隊がグルニア騎兵団を二つに断ち割り……勝敗は決した。少女は再び、敵軍の鮮やかな勝利に心を奪われたのだった。

「もちろんあのお二人の活躍はめざましいものがありました。ですけど、それもマルス様が適所に彼らを配置したためですよ」
「そうかな」
「そうですよ。ご自分でもわかっていらっしゃるくせに。ドーガさんの部隊で守り、騎馬の足を止めたところで背後から不意にバヌトゥさんに攻撃させましたよね、解放軍にマムクートがいるだなんてグルニア兵は思いませんからね。そりゃ、驚きます。どんなに訓練された騎馬隊でも算を乱しては何ともなりません。そこへ弓隊と騎馬隊で一斉攻撃。あの時のグルニアはまだ私の味方だったわけですけど」
 そう言って少女はちょっと笑った。つられて少年も笑う。
「胸がすくような戦い振りでした……負けているのは味方なのに。悪い味方です、私」
 ぺろっと舌を出した少女の仕草に、少年は声を上げて笑った。
「もっともあの時はマルス様もご存知のように丸腰でしたから、どのみち助けに入ることはできなかったんですけどね」
 少年は軽く、二度うなずいた。
「どうです? マルス様は一流の指揮官なんです。不敗将軍なんですよ。自信、付きました?」
 そう言われた少年はちょっと驚いた顔を見せてから、あごに手を当てて少しの間考えるそぶりを見せた。
「そうだね……これだけ力説してもらっては認めないわけにはいかない。ありがとう、カチュア」
 少女はうなずくと、とびきりの笑顔を見せて問いかける。
「もう眠れますね? 常勝将軍でも居眠りをしていては采配もできませんからね?」
 少年は少女の冗談に微笑む。
「ああ、大丈夫だよ……でも、カチュアこそ眠れそうかい?」
 少年の問い掛けに、少女はぶんぶんと大きく、何度もうなずいた。
「ええ、マルス様とお話していたら、気が晴れました」
「そうかい? それは良かった。じゃあ、もう寝ようか。天下無双のマケドニア白騎士団第三分隊も、そのリーダーが寝不足じゃ、力を発揮できない」
 少年はそう言って立ち上がると、少女に向かって手を伸ばした。少女は一瞬ためらったが、その手を取り、立ち上がった。
「もう、マルス様ってば、からかわないでください」
 そう言って少女が少年の顔を見ると、彼の目は笑ってはいない。
「いや、実際カチュアの部隊には頑張ってもらわないとならないからね。黒騎士団にひとかたまりのままで突撃されては敵わない。ドーガでも止めきれるかどうか。どれだけカチュアとパオラの部隊が攪乱してくれるかが鍵になるんだ。信頼しているよ。いつも辛い任務ばかりで申し訳ないけれど、よろしく頼む」
 少年が深々と頭を下げたので、少女は慌てて「もったいない、私などに頭を下げないでください」と言うと、少年の身体を起こそうとした。
「……ありがとうございます。攪乱、偵察、遊撃。そういった任務のためにペガサスナイトはいるんです。そういった任務はお手のもの。何なりとお申し付けください」
 少女の真剣なまなざしに、少年も目をそらさず、大きくゆっくりとうなずく。
「そう言ってもらえると助かるよ。ありがとう。さあ、戻ろうか」

 少年と少女は、ゆっくり、ゆっくりと自分の幕舎へと向かった。少年の幕舎は中央にある。二人は先にたどり着いた、少女の幕舎の前で足を止めた。
「おやすみなさい、マルス様」
「おやすみ、カチュア」
 そう言って、自分の幕舎へ帰る少年を、少女は見つめ続けた。少年は振り返らない。
 だが、少女はそれで満足だった。あの人には、待っている人がいるのだから。自分は、その後ろ姿を見つめ続けるだけでいい。
 このグルニアさえ陥落させれば、この長い戦いの終わりも見えてくる。しかし戦いが終わってしまえば、きっとマルス様と一緒にいることはできなくなるだろう。
 いっそ、このまま戦いが長引けば、ずっとマルス様と一緒にいられるのに――
 一瞬浮かんだ恐ろしい考えを、少女は慌てて打ち消した。そもそも、風の噂によれば自分の妹さえ敵方に囚われ、消息が知れないのだ。一体いつの間に自分はこんなに腑抜けてしまったのか。
「マルス様にはシーダ様がいらっしゃるんだから」
 そう、意識して口に出すと、少女は両手で自分の頬を張った。
「明日もマルス様のために、ミネルバ様のために、全力で戦うわよ、カチュア」
 そうつぶやくと、少女は寝床へ身体を横たえた。明日はマルス様の言う通り、厳しい戦いになるだろう。マルス様についていけば決して道は誤らない。だから、エストのことは心配だけれど、この身全てを槍として、ひたすら目の前の敵と戦えばいい。そのためには、寝るのも重要な任務。この身の槍を、充分に研ぎ澄ましておかなければならない。
 そう決意した少女は、程なく眠りへと落ちていった。